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文具・小売・ノベルティ業界向け開発ストーリー

書き心地にこだわった付箋紙 どんな用紙でも安定した粘着加工を

文具・企画・制作・販売

『付箋』と言えば、白上質紙、色上質など一般的な紙の中からメーカーが選定した用紙を使うのが通常ですが、お客様が自分で指定された用紙でも付箋製品が作れることをご存知ですか?
今回文房具会社A様は、独自に『紙の風合い』と『書きやすさ(筆記性)』にこだわった用紙、しかも中性紙を開発されており、当社の粘着加工技術でその用紙を使った付箋を製品化しました。

事例のポイント

  • お客様こだわりの用紙で製品化
  • 同じ用紙で作ったノートと同等の書きやすさ(筆記性)
  • 粘着加工から抜き印刷加工・仕上げまでのワンストップ体制が実現する開発スピード

王子グループ 機能材カンパニーが選ばれた理由

  • お客様指定の用紙での付箋製造技術
  • 塗工剤の専用設計によって中性紙にも対応、筆記性能を確保
  • 一貫製造による安心感

お客様の課題・開発の背景について

お客様こだわりの用紙を使った付箋を開発力とフレキシビリティーで、他社にはできない短納期で製品化を実現しました。

新タック化成株式会社 生産本部 豊中工場 研究技術部 谷野祐治グループマネージャー

A社様はもともと『紙の風合い』、『書きやすさ(筆記性)』にこだわった用紙を自社で開発し、それを使ったノート、便箋、カレンダー等を展開されていた文房具メーカー様でした。これらの製品の販売が非常に好調であり新製品のラインアップを検討されていた中で、ノートやカレンダーと組み合わせて使用できる『同じ紙を使った付箋』を企画されました。
しかし、付箋を作るメーカーは製造条件の変更リスクを抑えるため独自に選定した専用紙(多くの場合は酸性紙)を使用している場合が多く、A社様のような独自に開発された用紙、しかも中性紙を使った製品化に応えるメーカーがありませんでした。用紙を変更する場合は、製造条件や使用材料の調合などを変更して調整することが必要ですし、糊と紙の相性の問題で、付箋やラベルでは酸性紙を使用することが多く中性紙に合わせた材料調合は更に難易度が高くなります。特にA社様の企画の場合は先行して発売時期が決定しており開発期間が限られていたため、手を挙げるメーカーを見つけることが更に難しかったのです。
そのような状況の中で、弊社にお声が掛かり製品化に取り組むことになりました。

開発中に苦労したことについて

「こんな紙で付箋を作りたい!」の実現のため、独自の材料技術、加工技術を生かし、あらゆる紙で書きやすさ(筆記性)を追求します。

ロット毎に、実際にペンを使って筆記性の確認をしています

『付箋』とは、ご存知のとおり、メモを書いてノートや書籍、デスクなどに貼り付ける、部分的に糊をつけた小さな紙のことです。最近はアイディア文房具のヒットも多く、付箋にも様々な種類があります。紙で作った付箋が主流ですが、その中でも目立つ蛍光色、サイズの大きなもの、先端に色付けしたもの、動物などをデザインして立体にしたもの、ミシン目で切り離すことで意味や絵柄を変えるものと様々です。また、ノートや手帳と付箋を組み合わせて使い方を紹介するアイディア製品も出ています。今回のお客様であるA社様のご依頼は、まさにそのノートや手帳と一緒に使う付箋の製品化でした。A社様は、もともと『紙の風合い』、『書きやすさ(筆記性)』にこだわった用紙を自社で開発しそれを使用したノートや便箋、カレンダーを販売中で、それらと一緒に使用する付箋を製品ラインアップしたいとのご要望でした。付箋というものは基材となる紙と、その紙の表裏に目止層、剥離層、部分的な粘着層という順番で塗工する構成になっており、様々な筆記具で書くことができて色々なものに貼って剥がせる機能を持たせるために、それぞれの用紙に合わせた剥離剤、粘着剤などの塗工剤の種類、塗工量、塗工条件を決めています。塗工剤の種類や量によっては筆記性が悪くなったり製品がカールして見栄えが悪くなったりするので、それぞれの紙に合わせた専用の塗工剤を調製し、0.1g/m2単位で細かく塗工量を管理しています。                                        

一番のハードルは、A社様指定の紙を使用するために塗工剤、塗工量などの条件を設定する必要があるのに加え、こだわりの1つでもある『書きやすさ(筆記性)』を実現することにありました。付箋の場合は、用紙の表面に剥離剤を塗工する必要があるため、剥離剤塗工が不要な通常のノート等と比べるとペンのインクをハジキ気味になってしまい、同じ用紙を使ったノートやカレンダーへの『書きやすさ(筆記性)』と同じレベルにすることが非常に難しかったのです。しかも、A社様こだわりの用紙は“中性紙”でした。中性紙とはパルプを分散させた水を中性~弱アルカリ性に調整して製造した紙のことで、製造された紙も中性~弱アルカリ性のpHを示すので酸化による強度低下や変色を起こしにくく保存性が良いためノートや書籍に多く利用されています。一方で付箋のような粘着加工に使われる糊とは相性があまり良くないこともあって、長期の保存性を求められることの少ない付箋には酸性紙を使用することが多いのです。このようにA社様こだわりの用紙で付箋を作成するためには、難しい課題がいくつかありました。

塗工の条件出しのため弊社製品の付箋と同じ塗工剤、塗工量、塗工条件で製品出来栄えを確認しましたが、A社様指定の筆記具で滲みが発生し、その他にも製品のエッジ浮き、糊部の浮きがあってカールが発生してしまいました。これらの2点を改善して『書きやすさ(筆記性)』をノートと同等にするには塗工剤設計をやり直す必要があると考え剥離剤の設計に取り掛かりましたが、対策として、一つは剥離剤の固形分濃度を上げてウェット塗工量を減らすこと、もう一つは塗工量自体を下げてドライ塗工量を低減させることを試みました。剥離剤は元々薄膜塗工を実施しており塗工量が小さく、これを下げ過ぎると剥離機能が失われるため、剥離剤に内添するシリコーンの種類を変更したり量調整をして試作を繰り返しました。最適な塗工量を見出すのに苦労しましたが色々な条件を試した結果、A社様にご満足いただける『書きやすさ(筆記性)』が達成できる条件を見出すことに成功しました。さて次はカールですが、弊社内で付箋用に使っていた用紙に比べてお客様の指定紙は塗工剤の浸透性に違いがあり、指定紙の浸透性、剥離剤の設計変更、塗工条件の変更を考慮して、剥離剤以外の塗工剤である目止剤、粘着剤の塗工量、塗工条件を見直しました。さらに、塗工時の基材への水付け量も調整してカール状態を確認することで最適な条件を見出すことに成功しました。

今回、もう一つの課題がスケジュールでした。お客様の発売時期が先に決定していたため、指定紙を入手してから実質3ヶ月弱しか開発期間がありませんでした。既にお客様は発売に向けてパンフレット作成や営業活動を着々と進められており、是が非でもスケジュールに間に合わす、やり遂げる気概で臨みました。弊社の持ち味であるフットワークの軽さを活かして、試作→サンプルを提出→お客様での評価→フィードバック→また試作、というサイクルを高速で繰り返すことで短期間に製品化できました。
お客様と一体となって開発したこの付箋、書きやすさは同じ用紙を使ったノート等と同等とご評判いただいています。

開発の成果について

営業、開発、製造が一体となって、お客様の課題、悩みをより身近に、よりスピーディーに解決します

事業の定例会議にて。毎月、開発から製造・販売までが集まって情報交換を実施しています。

付箋に使用する塗工材料設計技術と、塗工から付箋への加工までの一貫生産・販売体制が一緒になって、お客様ご要望の紙の風合いを生かした『書きやすさ(筆記性)』を出すのに成功しました。開発から製造・販売までが1つの事業にまとまっていることでお客様の課題、悩みに対する抜本的対策をスピーディーに打てたのだと思います。
また、営業担当がお客様のニーズ、要求品質を的確に捉え、開発、製造に伝えることで、的確に短期間で製品化することができました。
これからもお客様、営業、開発、製造の間の距離感をなくし、一体となってお客様の課題や悩みを解決することを大切にしていきます。

今後の展開ついて

付箋はもちろんですが様々な粘着加工製品を、粘着原紙から加工までの一貫生産で小ロットからお客様のニーズにお応えします。お客様の様々なアイディア、課題などをお気軽にご相談ください

お客様のアイデア、こだわりを形にします

付箋は、アイディア次第でいろいろな使い方の出来る将来性のある製品です。
これからも、こんな材料を使って付箋を作りたい、こんな形の付箋を作りたいというお客様の声に応えていきたいと考えています。
当社では紙やフィルムなどの材料を使った粘着シートから印刷や型抜きなどを施したラベル等加工品までを社内で一貫生産しており、営業、開発、製造が一体となって小ロットからお客様のご要望やアイディアを形にして、課題、お悩みの解決にお応えしていきます。

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